タバコの火種の損害は補償対象?

タバコの不始末によって、家の絨毯を一部焦がしてしまうケースは少なく有りません。

こんな時は、火災保険で補償の対象になるのかどうか?

結論からいうと、単に絨毯が焦げただけでは、保険事故としての火災には含まれません。

少し詳しく解説させて頂きます。

火災の定義を考えてみる

まずは「火災」の定義を考えてみましょう。1985年に出版された大森忠夫氏の「保険法(補訂版)」の204ページには、「社会通念上いわゆる火事とみとめられる性質と規模とをもった火力の燃焼作用をいう」と定義されています。

しかし、これでは定義として曖昧なので、1995年に中央経済社から出版された「注釈住宅火災保険普通保険約款」の火災の解釈として、「火災とは、一定の火床なく発生した火、又は火床を離れ自力で拡大しうる火(損害火)をいう。」と解釈されるのが有力な説となっています。

このような「火災」の意義については、1978年に成文堂から出版された「火災保険研究」の中で詳細な検討がされていますが、コンセンサスがあると認識されているのは、「火災に当たるためには、火が保険の対象に燃え移る必要がある」という考え方になっています。

したがって、この記事のタイトルにあるように、タバコの火種が落ちて絨毯を焦がしただけでは、火災による損害には当たらないという事になります。

同じように、「火を伴わない単なる焦損や、発火の段階に至らない過度の醗酵や自然発熱、煤(すす)けや亀裂、燻(くすぶ)り等による損害(これらの損害も火災と因果関係がある場合は当然てん補されます)、電気のショートによる損害、ストーブの熱による家具の焦げ損、暖炉中に落ちた宝石の滅損、あるいはアイロン、タバコによる畳の焦げ損は火災には当たらない」と専門書には書いてあります。

自然発熱が要因での火災には免責規定がある

もし過度の醗酵や自然発熱の結果、火災が生じた場合は火災に該当することになりますが、この様な損害については免責規定が設けられています。

例えば損害保険料率算出機構の「火災保険標準約款」の3条(3)の②には以下の様な規定があります。

当会社は、次のいずれかに該当する損害および次のいずれかによって生じた損害(注)に対しては、保険金を支払いません。・・(略)

②保険の対象の自然の消耗もしくは劣化または性質による変色、変質、錆び、かび、腐敗、腐食、浸食、ひび割れ、剥がれ、肌落ち、発酵もしくは自然発熱の損害その他類似の損害

(注)前条の事故が生じた場合は、①から③までのいずれかに該当する損害に限ります。

これに対して、例えば燃え殻がカーテンに飛び火して燃え上がったケースであれば、「火災」に当たると考えて良いです。

議論を呼ぶケースとしては、保険の対象が建物だった場合、「隣家で火事が発生し、自宅に燃え移るまでには至らなかったけど、建物の外壁が焦げたり、煙で変色しただけでも、火災による損害になるかどうか?」です。

現在のコンセンサスとしての考え方は、前述のとおり、火が保険の対象に燃え移ることを要するとしているので、外壁の焦げや変色では火災としての損害には当たらないという考え方になりますが、実務上、「火災に」該当するとして保険金の給付が実行される場合も現実にあるようです。

絨毯の焦げは、なぜ火災に当たらないのか?

なぜ絨毯等の火を伴わない焼け焦げが「火災」に当たらないのか?

この根拠は、「火災」とは「火事」のことであり、社会通念上、「火事」に焼け焦げは含まないと解釈するのが一般的になっているからです。

この考え方については、1978年に発行された「火災保険概論」に以下の様に説明されています。

火災は経済主体に経済的損失を与えるかぎりにおいてのものとして理解されるべきである。

そしてこの損失は、社会通念上、相当の大きさを有するものでなければならないため、単なるテーブルの焼け焦げなどによる経済的損失は、火災保険の対象とはならない。

つまり、明らかに経済的損失が生じた場合が火災保険の火災に該当するものであり、ちょっとした焼け焦げ程度では火災保険の対象にはならないということになるわけです。

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