マンションの上階から水漏れ

例えばマンションの上階の部屋のベランダから水漏れが発生して、自分の部屋に漏水が生じてしまった場合に、火災保険の補償対象になるのかどうか?を解説します。

結論からいえば、火災総合保険(住宅総合保険)の場合は、基本的に補償対象となるでしょう。

すこし詳しく解説させて頂きます。

損害保険料率算出機構の約款を分析

損害保険料率算出機構の【火災保険標準約款2条(3)】には、以下の様に書いてあります。

「当会社は、次のいずれかに該当する事故によって保険の対象について生じた損害に対して、この約款に従い、損害保険金を支払います。」

(中略)

②次のいずれかに該当する事故に伴う漏水、放水または溢水(水があふれる事)による水濡れ。ただし、(2)もしくは(6)の事故による損害または給排水設備(スプリンクラー設備・装置)自体に生じた損害を除きます。

ア:給排水設備(スプリンクラー設備・装置)に生じた事故
イ:被保険者以外の者が占有する戸室で生じた事故

上記をふまえて考えた場合、マンションの上階の部屋から水漏れが「イ:被保険者以外の者が占有する戸室で生じた事故」に該当するかどうかが問題となります。

まず、ベランダが「被保険者以外の者が占有する戸室」に該当するのか?

この「戸室」の定義について、戸室に上階の専有部分を含む事と、逆に共用部分については含まないことは明らかだと思います。

しかし、ベランダ等の専用使用部分を含むのかは、議論の余地があるといわれています。

なお、専有部分とは、「区分所有権の目的たる建物の部分」(建物の区分所有等に関する法律2条3項)をいい、おおむねマンションの住戸部分に当たります。

共用部分は、専有部分以外の建物の部分等をいい、エントランス、廊下、エレベーター等を意味します。

専用使用部分は、共用部分ではあるものの、特定の者が専用に使用できる部分をいい、ベランダ、メーターボックス等が該当します。

損保ジャパンの約款を分析

損保ジャパンの約款の場合、戸室について「被保険者以外の者が占有する室内の他、空家、ベランダまたはルーフバルコニー等の占有スペースを含みます。」と明確に定義されています。

マンションの居住者は、専用部分とベランダなどの専用使用部分とを一体として使用するので、損保ジャパンの約款の定義は分かりやすく妥当であり、上記の損害保険料率算出機構の約款でも同じように解釈してよいでしょう。

したがって、マンションの上階のベランダからの水漏れは、専有部分又は専用使用部分からの水漏れであれば、保険事故として補償対象となります。

経年劣化で水漏れした場合は?

「被保険者以外の者が占有する戸室で生じた事故」に関して、「上階居室の経年劣化を原因とする漏水」を保険事故に含むかどうか?が議論になっています。

経年劣化自体は「事故」ではないように思えるからです。

まず整理したいのは、ここでいう「保険事故」とは、「戸室で生じた事故に伴う漏水等の水漏れ」という事です。

そのため、「居室で生じた事故」の事故とは、保険事故の原因となった出来事(一定の事実)という趣旨となります。

そう考えると、経年劣化も保険事故の原因になった出来事となるので、「居室で生じた事故」に含まれると解釈するのが妥当な考え方になります。

なお、保険の対象の経年劣化起因の損害は免責になりますが、上階居室は保険の対象ではないので、その保険の対象外の物の経年劣化起因の水漏れ事故については、免責条項が適用されないようになっています。

損害賠償について

なお、上階からの水漏れの被害者は、その原因箇所が専有部分・専用使用部分であれば上階居室の占有者・所有者に対して損害賠償を、もしくはそれが共用部分であれば管理組合に対して、民法717条に基づいての損害賠償請求が可能なケースが多いです。

被保険者は、自らの火災保険会社・加害者のいずれに請求しても良いですが、損害保険の本質は「実損てん補」なので、一方から損害額全額のてん補を受ければ、その損害額を超えてもう一方に請求する事はできません。

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