落雷の被害は、火災保険の対象になる?

例えば、約3キロほど離れた変電所に落雷があり、オフィスのパソコンや電子機器類が異常過電圧で故障したり、壊れてしまうケースがあったとします。

この場合、火災保険で補償される「落雷によって生じた損害」に含まれるのでしょうか?

今回はこのテーマを、過去に裁判所で出された判決(判例)も参考にしながら解説させて頂きます。

雷の直撃や近隣の落雷でないと、損害補償に含まれません

過去の裁判による判例をベースで考えると、「落雷」によって損害が生じ場合とは、「異常高電圧電流の通電など落雷のエネルギーによって直接に保険目的物に損害が生じた場合をいうものと解するのが相当である」と、(高松高判平28・1・15)平成28年に高松高等裁判所の判例で定義されています。

上記の定義では、「落雷のエネルギーによって直接に保険目的物に損害が生じれば良い」ということなので、火災が起きなくても落雷のみで、その落雷によって直接損害を被った場合は「火災保険で補償される落雷による損害」となります。(火災とは別個の保険事故として規定されています)

また、1995年に中央経済社から出版された「注釈住宅火災保険普通保険約款」によると、保険目的物が建物の場合は、落雷が建物に直撃して損傷するケースだけでなく、隣家に落雷が落ちてそれによって建物が損傷するケースも補償の対象になります。

これに対して、記事のタイトルに有るように、離れた場所の送電施設に落雷が発生し、異常過電圧等によって保険の目的物に損害が発生した場合は、【落雷のエネルギーによって直接に保険目的物に損害が生じた場合】とは言い切れないので、保険事故としての「落雷」には該当せず、これによる異常過電圧等によって生じた損害は補償の対象外になります。

過去の判例では、補償が認められたケースも存在します

なお、上記の平成28年の高松高裁での判決の前に、高知地方裁判所で平成26年に出された判例では、送電施設の落雷による瞬低(瞬間的に電圧が低下する現象)は、保険事故としての「落雷」に該当し、因果関係もあるとして、補償対象と判断された判例も存在します。

保険事故は保険の目的物に生じなくてもよい」との理解のもと、遠隔地であっても落雷は落雷なので保険事故に該当し、さらに「保険事故と保険の目的物に生じた損害との間に相当な因果関係があるかどうか」で判断された判例です。

まとめ

保険事故としての「落雷」が保険の目的物に直接生じなければならないか否かは、約款で一律に明確に決まっているとは言えないのですが、伝統的には「保険事故は保険の目的物に生じなければならない」とされています。

したがって、タイトルに書いてあるように、遠隔地での落雷は、たとえ保険の目的物との損害について因果関係が認められるとしても、そもそも保険事故としての「落雷」には該当しないと考えらるのが一般的です。

また、「保険事故が保険の目的物に生じなくてはならない」とすると、「近所で落雷などが発生した場合も保険事故にはならないの?」と疑問が出てきます。

しかし、この場合は契約者保護の観点から、常識的に考えて判断されるので、平成28年の高松高裁の判決では、「保険目的物を雷が直撃する場合はもちろん、直撃ではなくても、例えば近所の柱上変圧器付近に落雷したため、引込線で繋がっている保険目的物の内部を異常高電圧電流が通電した場合」にも「落雷」に該当すると判断して、従来の保険事故の範囲の見解を広めに解釈した判例が出されています。

結論としては、遠隔地に雷が落ちても、火災保険で補償される「落雷による損害」と認められない可能性が高く、落雷が直撃したり、近所で落雷があった場合には「落雷による損害」と認められる可能性が高いという事です。

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